金銭的な損失だけではありません。そのとき相手を信じようと思った自分に自信がなくなりますし、裏切られたという事実は、我々にとってもつらいもの。そういった後味の悪さを回避するためにも、やはり私情を挟まず、商品だけで判断しなくてはならないのです。逆に、シビアな現実によって後味の悪い思いをすることもあります。20代そこそこの女の子が二人連れ立って、立て爪ダイヤの指輪を持ってきたことがありました。片方の女の子が近々結婚するとかで、その婚約指輪なんですね。「お兄さん、これ見てよ!」なんて言って、二人とももうルンルン。指輪を受け取って鑑定している間にも、「来月あたりに結婚で〜」なんて、いかにも楽しそうに話し続けているんです。何でもその指輪は、事業家の彼が買ってくれたもので、100万円くらいしたものだとか。でも、じっくり見ると、それはダイヤモンドじゃなかったんです。楽しそうにうきうきと話しているだけに、非常に言いづらくて。でも、「それでお兄さん、それっていくらくらいになるものなの?」と聞かれては、答えないわけにもいきません。しぶしぶ「とても言いづらいんですけれど、これ、本物のダイヤじゃないんですよ」と言うと、いきなり顔が青ざめ、わーっと泣き出して……。声を上げて鳴咽し始めたんです。私もその反応に驚き、とりあえずティッシュを渡して、落ち着くまで待ちました。事情を聞くと、結婚しようと言われ、まずその指輪をもらったらしいのですが、そのあと彼は新しい事業を始めたいから、100万円が必要だと言い出したそうです。「俺は結婚したいから、投資してもらった100万円でその指輪を買ったけど、新しい事業にどうしてもその100万円が必要だから、一時貸してくれないか」と。結論から言うと結婚詐欺なんですね。彼女は、そのお金を貸した直後に、某質屋に来たようです。「まさかねえ」とは思いつつ、念のために確認したい、という気持ちだったのではないでしょうか。でも、本人もまさか本当に結婚詐欺だとは思っていなかったから、あんなに泣いたのでしょう。その後、彼女は改めて某質屋に報告に来てくれました。「やっぱり編されていました」と。こういう場面に出くわしてしまうと、やはりやるせない気持ちになります。
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